注意:ここで説明していることは筆者の主観が入っているため、受験生は必ず入試説明会で正しい情報を仕入れてください。
大学院HP:北海道大学公共政策大学院 – Hokkaido University Public Policy School
基本情報
・2005年開学*1
・通称「HOPS(ホップス)」(Hokkaido University Public Policy School)
・日本政策投資銀行のほか、総務省、厚生労働省、環境省等から実務家教員を受け入れ*2
・院長挨拶より:一極集中を進めつつも人口の減少と高齢化を免れない地方中核都市・札幌市とともに,「過疎」や「空洞化」に直面しながらも独自のプランで再生・発展を試みる,幾多の革新的で挑戦的な道内コミュニティが,ごく身近な存在として意識されるはずです*3。→北海道を舞台とした「公共政策」という学問を学べる
他大学院にはない特徴
理系科目が豊富
・法学部、経済学部、工学部で構成*4
・公共経営コース、国際政策コース、技術政策コース*5
→技術政策コース向けで入学時に「奨学金」*6が貰えるが人数が少ない傾向にあるため、採用対象になりやすい
・科目一覧(主観で抜粋したため、間違えている可能性もあり)
- 技術政策学
- 環境技術政策論:理系寄り*7
- 都市技術政策論
- 社会資本政策論
- 環境リスク管理論:理系寄り*8
- 自然災害論
- 農業政策論:農学部
- 森林環境保全論:農学部
- 廃棄物技術政策論
- 技術政策特論Ⅰ・Ⅱ
- 社会資本政策事例研究
- 災害危機管理事例研究
- 文理融合政策事例研究など
引用先:*9
注意:一部隔年開講。年度によって別科目が追加されたりする。
・インフラ、防災、環境、第1次産業を理系の側面から学べる。
・技術系公務員志望(国交省・環境省・農水省など)は第1志望にしやすい。
・多くの入学希望者が、環境負荷を低減したまちづくりを環境技術と法制度の両面から実践的に学べることなど、文理融合の理念を志望動機として挙げている*10。
・文系学生向けに難易度調整されている科目あるため、一部物足りないと感じる理系学生もいるかも。
フィールドワークによる政策提言
・「社会調査法(前期)」と「政策討議演習(後期)」によるチームで1年間の研究活動
→大学院で事前に提携している自治体からテーマを受託する形式、社会調査法だけの履修も可能
・社会調査法:週1コマ、政策討議演習に向けた調査計画・仮説を設定、文献調査と現地視察が中心、学内報告会あり
・政策討議演習:週2コマ、解決策の提言に向けた課題抽出作業(アンケートやインタビュー、他地域のへの訪問)、学内報告会と提言先の自治体への報告会あり
・注意:「公共政策学」*11の履修を進めているが、東北大のような調査方法の基礎を学ぶ科目は公式的にはない
・相性の良い科目「イノベーション・マネジメント論」:札幌市を散策して観察したことからテーマ設定をし、新規事業を提案する授業
→現場目線で解決策を提案するための思考法が共通している。しかし、開講時期が後期であるため授業が終わる頃には報告書の執筆作業をしていて、中途半端になるかも。
・東北大学の公共政策ワークショップⅠとの違い
- 特定の自治体から与えられたテーマをもとに調査→地域密着
- 全部で45コマ、前期2単位と後期4単位の合計6単位→授業時間・単位数が半分
・現場目線で政策提言をするため、東北大志望の方は併願先にできる
引用先:北海道大学 シラバス・成績入力システム/HOKKAIDO Univ. Entry System of Syllabi and Academic Records - シラバス検索
過去の活動の様子:学生の提言活動 – 北海道大学公共政策大学院
地方創生系の科目と国際関係の科目の両方が充実
・地方創生系の科目一覧(主観で抜粋)
- 地域政策論
- 比較政府間関係論
- 公共経営特論
- 社会調査法
- 政策討議演習
- 公共経営事例研究など
※HOPSは北海道を舞台とした大学院であるため、その他の科目でも道内事情は学べる
引用先:*12
・外部評価より:ローカル性とグローバル性の相互作用が強まる今日にあって、地域との強い連携は貴大学院の大きな強みである*13。
・国際関係の科目一覧
- 国際公共政策学
- 国際関係法
- 国際政治経済学
- 国際金融論
- 国際協力論
- ジェンダー政策論
- 国際人権法
- 国際経済学
- 開発経済学
- 現代アジア政治外交論
- 現代アメリカ政治外交論
- 現代ヨーロッパ政治外交論
- 現代比較アジア法
- 国際政策特論Ⅰ・Ⅱ
- 英語実務演習Ⅰ・Ⅱ
- 中国語実務演習
- 国際政治経済政策事例研究など
引用先:*14
→国際系の科目の方が多い
・大学院独自の短期留学制度もあり、奨学金が用意されている*15
→東大や一橋のようなダブルディグリー制度はない
その他のカリキュラムについて
履修要件
・卒業要件:42単位以上
・選択必修:前提科目8『必修4単位含む』、根幹科目4、展開科目6、実践科目と政策事例研究科目8、リサーチペーパー2以上の計28単位以上*16
リサーチペーパー(卒論)
・2単位か8単位のどちらかを履修する必要(両方履修して10単位取ることも可能)
・公共政策特別研究Ⅰ(2単位):6,000~8,000字程度、前期か後期の半年間で執筆、「基礎科目」を3~4科目取得する必要*17
・公共政策特別研究ⅡA(8単位):20,000字程度、1年間かけて執筆、専任教員のうちの研究者教員のみ担当可能*18
→書きたいテーマを担当出来る先生が実務家教員しかいない場合は2単位で書かざるを得ない
・公共政策特別研究ⅡB(8単位):1年修了の社会人学生向け、入学時に実務経験に関するペーパー(10,000字程度)を提出、「政策評価論」を履修済み前提、それ以外はⅡAと同内容*19
コース間の違い
・公共経営コース:国や地方の自治体および民間セクターの立場からいかに政策過程に関わっていくか、公共的価値と個別的利益、公正と効率の調和をどのように図るかを学ぶ。国家・地方公務員や行政に隣接する分野の専門職業人、官民パートナーシップを推進する民間企業の指導者の育成を目標。
必修科目:技術政策学・統計分析*20
→文系推奨、広く学びたい人向け
・国際政策コース:国際的公共秩序を展望するか、日本を含む東アジア、アメリカ、ヨーロッパにおける内外諸政策上の課題をとらえ、その打開の道を探る。外務、国際公務員、ジャーナリスト、開発協力関係の官民指導者のほか、活動の拠点を地域におきつつ国際的な観点から公共政策の立案に携わる、地方公務員や民間セクターの人材育成を目標とする。
→海外に興味がある人は文理関係なく選択を推奨
・技術政策コース:社会の福祉や安全に影響を及ぼす技術革新、急速に発展するテクノロジーをいかに社会のニーズに結びつけるか、技術と社会を連結する行政計画やプロジェクトの推進および評価、危機管理に関する実際的・専門的な技術政策を学ぶ。理工系の知識を具体的な政策に返還していく技術系公務員、民間における技術政策や公共サービスの中核となる人材の育成を目標とする。
→理系推奨
問題点:推奨授業科目(A類)とそれ以外の授業科目(B類)が各自設定されているが、「実際に履修すべき科目としてはコース間での差異が不明確」*23より履修は自由に組みやすい、明確な違いは必修科目ぐらい、コース選択で卒論のテーマや就職先が制約されることはない
エクスターンシップ(任意)
・行政機関や民間などに一定期間の間、職場体験をして単位取得
→インターンシップを通して単位を貰える制度という意味では他大学院と同じ
・おおまかな流れ
オリエンテーション→事前・事後の研修→報告書の提出・報告会での発表
・受入期間の長さによって1または2単位取得可能
試験内容
試験種
- 基準特別選考→一定成績を修めた内部生、国総合格者、TOEFL等の英語資格で一定の成績のある者*24
- 社会人特別選考→公共性のある仕事で2年以上の社会経験がある者*25
- 一般選考→学部卒の学生は基本的に選ぶ*26
- 外国人留学生特別選考→外国人留学生向け*27
・秋季(7月~9月)と春季(12月~1月)の2回実施→大多数は秋季に受ける
主な提出書類と受験科目
・志望理由書→2,000字程度(社会人入試は4,000字程度)
・専門科目試験→1区分選択、3時間(基準特別選考は無し)
- 法律→行政法(必須)、民法または国際法
- 行政→政治学(行政学を含む)、行政法
- 政治→政治学(行政学を含む)(必須)、国際政治または統計学
- 国際関係→国際法、国際政治
- 経済→マクロ経済学、ミクロ経済学
- 工学→統計学(必須)、社会資本政策学または環境工学
・外国人入試のみ:小論文試験
・1年修了の社会人のみ:10,000字のレポート(公共サービス関連実務経験及びその問題点と学修計画との関係)
余談:令和5年度試験まであった4000字程度の学習計画書が無くなっている
受験対策
説明会などへの参加
・大学院説明会、入試・修学相談会に行くこと
→リンク:大学院説明会・相談会 – 北海道大学公共政策大学院
・大学院体験入学に参加し、授業の雰囲気を知る
筆記試験について
・過去問を解いて難易度把握
・経済学について
公務員試験用のスーパー過去問ゼミの問題を全部解けるようにすると、大体5、6割は解ける。しかし、一部難しい問題もあるため、そこは大学の授業で使うような専門書に載っている問題を解くと良いかも
当時の筆者がどのように勉強していたかは以下の記事を参照
Eランク私立のノンゼミ大学生が旧帝大の公共政策大学院に独学で受かった体験記 - SJの勉強コンサル
→参考書の一例
・その他の科目について
法律、行政、政治、国際関係は公務員試験の記述試験・小論文対策をしておくと良いかも。恐らく、おすすめは政治学、国際政治、統計学かも
社会資本政策学と環境工学は理系の知識で小論文のように、事実と考察による意見を考えられると良いかも
・国家総合職試験用のテキストがあるなら、それを使うと良い
口述試験について
・筆者が受験したコロナ禍で筆記試験が無かったときは50分
・面接官2人対学生1人
・質問内容(経済学に関する質問は除く)
- 併願先の状況
- 学生生活(科目の履修状況)
- 入学後にしたいこと、卒業後の進路
- ゼミについて(辞めた理由、科目としての特徴)、やってたこと
- 就活はしていたか
- 希望就職先でやりたいこと
- 長所と短所など
・就活の面接と比べると一つ一つの質問についての掘り下げが浅く、淡々と次の質問に移る印象だが、ひたすら話して時間がすぐ過ぎる感覚
参考:Eランク私立のノンゼミ大学生が旧帝大の公共政策大学院に独学で受かった体験記 - SJの勉強コンサル
・面接対策の練習にふさわしいのは就職活動をしておくこと
過去の受験倍率
一般選考・・・受験者数の減少に伴い、合格者も減少しているが、倍率は年度によって乱高下している。しかし、2021年までは2倍以内に収まっているため、そこまで高くない方。東北大や京都大と同じくらい。
基準特別選考・・・受験者のほとんどが合格するため、倍率は低め。
社会人特別選考・・・人数も倍率も一定。
外国人留学生特別選考・・・志願者数と合格者数の増加は滞っているが、倍率が2倍前後で推移していて受かりやすいとは言いにくい。
修了生の進路
問題点:公務員を始めとする公共分野へ就職する修了生が少しずつ増えているものの多数とはいえず、国家公務員・地方公務員としてのキャリア形成を学生に意識付けることが求められる*29
カリキュラム以外の特徴
北海道津別町と連携した地方創生に関するフィールドワークを行うグループ「HALCC」:平成28年に本専門職大学院に在籍する学生グループが、同町が主催する「津別町まちづくりアイデアコンペ」への入賞を機に活動を開始した。津別町との連携のもとで地域住民との意見交換、フィールド調査を踏まえた研究成果発表や政策提言、地元高校生との共同プロジェクトなどを展開し、公共政策を学ぶ学生の視点から地方創生に主体的に関わっている。*30
→任意参加、津別町は北大から約320km離れている
北公会:就活の相談全般に対応してくれる(ES、面接、OB・OGの紹介など)。国総の政策課題討議演習の練習もしてくれるので独学の方は利用しておくべき
リンク:進路相談 | 北公会 | 北海道大学公共政策大学院進路支援室
まとめ
・必修科目は2科目しかないため、履修の自由度は高い→何をするかは自分次第・自己責任
・東北大のようなフィールドワークや東大、一橋のような国際系の科目と留学制度、明治大のような地方創生系の科目があるため、他大学院にある特徴を広く集約したようなカリキュラム
・法学だけでなく経済の授業も広く展開し、理系科目もあるため、学生の研究テーマとカリキュラムがミスマッチしにくい
・卒論は2単位か8単位を選ぶことができ、就活を両立しやすい、やる気に合わせた執筆ができる
・受験倍率は東大よりは高くないため、独学の人でも合格可能性のある門戸の開けた大学院
・一方、開講科目の分野が広すぎるがゆえに、文理融合については、その深度がはっきりしないこと*31、コース間での差異が不明確という指摘があるのではないか
*1:「大学院案内」(2023)https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/themes/hu-hops/docs/hops_info_23-24.pdf
*2:「外部評価」(2018)https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2019/06/3b60c47a98d3bb7d597917d6e70bc2aa.pdf
*5:同上
*7:「外部評価」(2018)
https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2019/06/3b60c47a98d3bb7d597917d6e70bc2aa.pdf
*8:同上
*9:「大学院案内」(2023)https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/themes/hu-hops/docs/hops_info_23-24.pdf
*10:「外部評価」(2018)https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2019/06/3b60c47a98d3bb7d597917d6e70bc2aa.pdf
*11:公共政策とは何かを学ぶ抽象的な授業
*12:「大学院案内」(2023)https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/themes/hu-hops/docs/hops_info_23-24.pdf
*13:「外部評価」(2018)https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2019/06/3b60c47a98d3bb7d597917d6e70bc2aa.pdf
*14:同上
*17:「シラバス」https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2021/04/1a1a381455550b050787be4ab55d8ac5.pdf
*18:「シラバス」https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2021/04/509bd9ab80e85ee37257522f10b1406a.pdf
*19:「シラバス」https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2021/04/a8e133a7937fe486104d95b537816f2c.pdf
*20:「大学院案内」(2023)
https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/themes/hu-hops/docs/hops_info_23-24.pdf
*21:同上
*22:同上
*23:「認証評価」(2019)https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2020/04/b8b9ae4e163b2b747193ff8861fd84e4.pdf
*24:①TOEFLのPBTで600点以上又はIBTで100点以上、②TOEIC900点以上、③英検1級、④国連英検特A級のどれか、書類審査と口述試験
*28:「認証評価」(2019)https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2020/04/b8b9ae4e163b2b747193ff8861fd84e4.pdf
*29:「認証評価」(2019)https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2020/04/b8b9ae4e163b2b747193ff8861fd84e4.pdf
*30:「外部評価」(2018)https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2019/06/3b60c47a98d3bb7d597917d6e70bc2aa.pdf
*31:「外部評価」(2018)https://www.hops.hokudai.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2019/06/3b60c47a98d3bb7d597917d6e70bc2aa.pdf