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【感想】日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?結婚・出産が回避される本当の原因 要約/山田昌弘-勘違いと見逃し、そして金

 今回は山田昌弘さんが書いた「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」を解説します。この本では少子化対策が失敗した理由は、本当の原因を見落としていたからとした上で、それに対処するための方策を提案しています

 日本は人口減少が止まらないことが、よく話題になりますが、テレビニュースなどで聞けないその原因を本書は明らかにしています。そこで、この記事ではこれらの話を紹介しながら、私のコメントも載せます。

目次

紹介する本

少子化対策が失敗した理由

 著者は少子化対策が失敗した理由を

  • 高学歴などの人の意識や態度を多数派の意識であると勘違いしていたこと
  • 未婚化が主因であることを見逃したこと
  • 結婚や子育ての「経済的側面」を軽視したこと、
  • お金がかかることに関しては政策の動きが鈍いこと、
  • 欧米に固有の慣習や価値意識である、子は成人したら親から独立して生活する習慣、仕事は女性の自己実現であるなどをそのまま日本に当てはめたから

だとしています。そして、現代の日本の少子化の根本原因は、経済格差が拡大しているにもかかわらず、大多数の日本の若者は中流意識を持ち続け、「世間並みの生活」をし続けたいと思っていることにあると述べています。

 これに関しては、政治の失敗が大きいと考えています。特にお金がかかる政策の動きが鈍いから、多数派の意識である経済的側面を見逃したと推測しています。本書を読むまで、「高学歴や大企業勤務などの人の意識を多数派として勘違いしていた」ということは考えたことがなかったので、真実に気づかされた気分になりました。

日本のためになる少子化対策の方針

 そのため著者は、若者の将来にわたる経済状況、もしくは、中流生活を期待する意識、そのどちらかを大きく変える政策をとらなければ、少子化は解消されないとしています。さらに、その中でも働きかけるべき若者の特徴として、「親が比較的豊かな生活水準を保っている」のに「自分が将来築ける生活は親の水準にも達しない」という考えを持っていると挙げています。

 そこで、この若者への対策として

  1. 結婚して子どもを2,3人育てても、親並みの生活水準を維持できるという期待を持たせること
  2. 親並みの生活水準に達することを諦めてもらい、結婚、子育てをする方を優先するべき

だと述べています。具体的に、1.は今の若者が生涯を通じて、世間並みの生活ができるという期待を持たせなければならなく、2.は世間体を気にせず、家族を形成して、自分たちなりの幸せを追求しようとする若者を支援するべきだと主張しています。

 著者に主張について、前節のように少子化の根本原因は明確にしていますが、対策については抽象的で具体例が想像しにくかったです。一応、具体的な方策として、世間並みの生活をさせるべきだと主張していましたが、もっと具体的に例えば、兵庫県明石市の子どもの医療費、保育料などを無料化したという事例を挙げて、踏み込んだ政策提言をしてほしかったと感じます。また、世間体を気にせず、家族形成をしたという例として、オタクのカップルについて述べられていましたが、これは部分的な事例ではないでしょうか。私はカップル事情についてはよく分かりませんが、行政が支援してもマクロに影響があるか疑問です。さらに、他に考えつきそうな例は主観では出てこなく、これも抽象的で主張力の弱さがあるでしょう。

まとめ

 今回は、

について紹介しました。正しい少子化対策は経済面を支えるということですが、既に分かっている、共感できる人が多いのではないでしょうか。逆に、期待する意識を変えることについては納得しにくかったです。また、著者の解決策については、曖昧さが見られたので、ここについては読者が考えていくしかないでしょう。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。

ショート動画版もあります

www.youtube.com

参考文献

山田昌弘『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』株式会社光文社、2020年

購入→日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?~結婚・出産が回避される本当の原因~ (光文社新書)