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【感想】給料低いのぜーんぶ「日銀」のせい 要約/高橋洋一-日本の財政は健全、賃金低すぎ、消費税は目的税じゃない

 今回は経済学者で虎ノ門ニュースでもよく出演している、高橋洋一さんが書いた「給料低いのぜーんぶ『日銀』のせい」を解説します。この本では、金融政策の基礎から、世間で流布している日本経済にまつわる嘘を説明し直しています。その中でも、国債残高は異常ではないこと、賃金が伸びていないことはかなり深刻であること、消費税は目的税にすべきではないことが印象的でした。これらはテレビでよく見る言葉ですが、この記事を読んで、あなたの経済に対する考えを改めてほしいです。

目次

紹介する本

日本の財政は健全

 日本の財政に問題はないことを説明する前に、政府と日銀の関係について触れておきます。著者は「政府と日銀は親会社と子会社の関係といえる」と述べています。その根拠は、

  1. 日銀の予算人事は政府が握っていること
  2. 日銀が出資する証券の保有者も、政府保有過半数を占めていること

から来ています。このことから、一時期話題になった「会社法」の親・子会社に政府と日銀が適用されるかは分かりませんが、実質的にはその関係にほぼ近い、同等ということでしょう。

 ここから、日本の財政は健全であることについて解説します。先ほど言ったように政府と日銀は親会社、子会社の関係であるため、財政状況を確認するためには両者のバランスシートを足したものを見なければなりません。その前に、政府のみのバランスシートは本書より以下のようになっています。

図1 政府の連結バランスシート(除く日銀)(単位:兆円)
本書を参考に筆者作成

 図1は簿記の初歩を知っていると簡単に理解できますが、政府のみで見ると、負債資産を上回っていて、大変だ!となるかもしれません。しかし、これに日銀のバランスシートを加えると以下のようになります。

図2 政府総合バランスシート(単位:兆円)
本書を参考に筆者作成

 図2は政府と日銀のBSを合計したものですが、資産が負債を大きく上回っていることが分かります。このことから、著者は日本の財政は問題ないと言っているのです。また、著者は図2のように「銀行券は理論上、利子負担がないうえ、償還負担(返済)もないため、実質的には債務とはいえない」と言っていて、さらに「徴税権を除いたとしても、左右の数字がほぼイーブンであることは見て分かる」と述べています。つまり、微妙な要素を除いても、負債が50兆円だけ多いから問題ないということです。50兆円が全体で見てどれくらい大きいと捉えるかは人によると思いますが。しかし、さらに付け加えると、IMF(2018年10月)によると、「日本の純資産(資産から負債をひいたもの)はほぼゼロ」だということを発表しているようです。IMFのお墨付きであれば、日本の財政状況に信頼をもてますね。

日本の賃金が伸びない深刻さ

 日本の賃金は伸びがとにかく低いです。それを裏付ける理由として、本書では

  1. 実質平均賃金の順位で1980年当時の22ヶ国の中で日本は12位から2019年に21位になった
  2. 1990年当時のOECD加盟22カ国で、30年間の名目賃金はほとんどの国で2倍以上になっているのに、日本の伸びはほぼゼロで、最低
  3. 実質賃金についても、50%ほど伸びている国が多く見られるが、日本はわずか5%程度で、飛びぬけて低い

と紹介しています。日本の給料が上がらないことは若い人ほど分かっていると思われるので、この数字を見てもあまり驚かないと思います。そして、著者は「賃金の下押し圧力として考えられるのは、なんといってもマネーの不足だ」、「マネーの伸び率は、日銀が金融政策でマネタリーベースを増やすことでコントロールできる」と述べています。このことから、2022年8月では、一部で量的緩和を止めるべきみたいな声を聞きますが、間違っているだろうなと考えています。ここの理由について詳しく知りたい人は実際に本書を読んでみてください。相関があるなどと説明しています。

消費税の増税は間違っている

 最後は消費税についてです。まず、財政破綻は消費税増税の根拠にならないことを説明します

 これは簡単で、先ほども言ったように、政府と日銀の統合型バランスシートで資産が負債を上回っているからで説明がつきます。以上です。

 そして、この節のメインは消費税の目的税についてです。よく福祉のために増税しようという論調を聞きますが、著者は「消費税は何にでも使える一般財源」、「社会保障目的税化』という議論自体が制度のあり方として間違い」だと述べています。その根拠として、著者は「年金や医療は、税方式ではなく『保険方式』で運営されるべきもの」、「保険とは保険料で成り立つシステムで税金とは関係がない」ということです。つまり、福祉を理由に増税すること、消費税を目的税として、法律に明記したことは間違いだということではないでしょうか。消費税は目的税の性質と相容れないということを言いたいのだと思います。また、財務省のサイトに載っていますが、社会保障の財源は保険料も多くを占めているため、足りなければ消費税ではなく、保険料の値上げで良いだろと思います。以下のリンクから消費税の使い道が分かります。ただ、見にくい図です。

消費税の使途に関する資料 : 財務省

まとめ

 この記事では、

  1. 日本の財政は健全であること
  2. 賃金の伸びの低さは世界的に見て最低
  3. 消費税の目的税化の議論は間違っている

ということを解説しました。経済に関する話はテレビやネットに転がっている情報だけでは、勘違いを引き起こしやすいです。そのため、自分から調べていくようにした方が良いです。本書もその方法で辿り着ける、情報媒体の一つでしょう。もっと本書を知りたいというあなたは、実際に読んだ方が良いです。ページ数は170くらいしかなく、値段も定価860円と安いです

 ここまで読んでいただきありがとうございました。

ショート動画版もあります

www.youtube.com

参考文献

高橋洋一「給料低いのぜーんぶ『日銀』のせい」株式会社ワニブックス、2021年

購入→給料低いのぜーんぶ日銀のせい (ワニブックスPLUS新書)