日本の長期政権である安倍政権の代表的な政策といえば「アベノミクス」です。しかし、名前は有名でも日本経済への効き目という意味では評価が低いと思われます。ですが、野口旭さんが書かれた「アベノミクスが変えた日本経済」を読めば、そこらへんも確認することが出来ます。私もこの本を読んで、アベノミクスの凄さをある程度は理解することができたため、この記事でその要点を抜粋していきます。他にも、私が個人的に気になった点にも触れていきます。安倍晋三氏のご冥福をお祈り申し上げます。
目次
紹介する本
アベノミクスの功績
そもそも、アベノミクスとは、第1の矢=大胆な金融政策、第2の矢=機動的な財政政策、第3の矢=民間投資を喚起する成長戦略からなる政策戦略です。まず、先に行っておくと、「2%インフレ率の達成」という目標は完遂されませんでした。ですが、ここからアベノミクスの功績となりますが、
- 名目GDPは2012年の約495兆円から2016年の約537兆円へと拡大
- 名目経済成長率は2012年~2016年までプラスを維持
- 2011年から12年には1ドル70円台の円高ドル安だった為替レートも、2014年以降は1ドル100円台から120円台の間で変動
- 労働力人口が拡大に転じたにもかかわらず就業者数がそれ以上に拡大し、結果として失業率が低下
- 相対的貧困率、子どもの貧困率、子どもがいる現役世帯の貧困率等は、いずれも2015年には大幅に低下
という結果をもたらしました。つまり、アベノミクスは少なからず効き目のあった政策ということになります。では、なぜインフレ2%を達成できなかったのかというと消費税の増税です。これは著書によると「景気弾力条項」で3%程度の名目経済成長率と2%程度の実質経済成長率の達成及び維持が前提」という約束によって、増税が行われたようです。私としては、この増税さえなければ、アベノミクスは歴史に大きな名を残す最強の経済政策だったのではないかと考えています。もったいないです。また、著者は「皮肉な結果をもたらした」と述べています。
内部留保の累積について
ここからはアベノミクスからずれる内容かもしれませんが、個人的に気になった点を紹介します。まず、日本企業が蓄積を続けている内部留保についてです。これについて著者は「『収益を内部留保として貯め込むばかりで労働者分配しない』という批判は明らかに、『企業の目的は利潤の追求にある』という資本主義経済の根本原理を忘れている」と述べています。私はこの本を読む前は内部留保が過剰蓄積されているとして、敵対視していましたが、読了してからは内部留保は企業の経営に欠かせないものだと考えを改めることが出来ました。また、野党では内部留保に課税すべきという意見を持っている政治家がいますが、的外れだと思います。もっと理由を知りたいという方は実際に読んでみてください。
政府債務は将来世代の負担なのか
次は毎年積みあがっている国債についてです。これも著者は将来世代の負担には必ずしもならないと言っています。その根拠はアバ・ラーナーによる政府債務将来世代負担への否定論を基に主張しています。この結論は「国債が海外において消化される場合には、その負担は将来世代に転嫁されるが、国債が国内で消化される場合には、負担の将来世代への転嫁は存在しない」というものです。日本の国債は国内消費がほとんどなので、この命題に当てはまると思います。また、さらに著者は「ラーナー命題がより高い妥当性を持つのは、不完全雇用経済において」だと述べています。つまり、日本はまだ不完全雇用だから、政府債務の将来世代への負担は起きにくいということです。ただ、この結論に至るまで著者はラーナー命題の問題点にも触れ、長い説明を展開しています。「本当かよ?」と疑問に持った方は、実際に読んでみた方が理解しやすいでしょう。
まとめ
この記事ではアベノミクスの功績に焦点をあてながら、内部留保や国債についても触れました。アベノミクスはある程度は日本に好景気をもたらした政策であるため、世間からの評価がもっと高まってほしいです。また、内部留保や国債について広げられている世論の勘違いも解消されてほしいです。この記事を読んで疑問を感じたあなたは、本書を実際に読んで、確かめてください。